このページでは、今や看護師求人の大前提となっている職場環境の改善策をご紹介します。
労働環境を改善すれば離職率は低下する!
特に新人の看護師が職場環境に適応できないまま辞めていくケースが後を絶たず、職場環境の改善が急務と考えられるようになりました。
看護師の職場適応度に関する論文で、統計学的にアンケート結果を集計したものがありますので、そちらの数値を例にご説明します。
アンケートの結果を分析する際には、統計学の言葉で信頼性係数と呼ばれている数値を使用するのが一般的です。これはある要素が結論に密接に関わっていることの信頼性を示すもので、今回の場合は、個々の労働環境が離職率とどれくらい関係しているかを表していることになります。
性格的な分析では0.7~0.8台、能力的な分析では0.8~0.9台が信頼性の目安になるとされており、労働環境と離職率について考える場合は、性格的分析の数値と捉えるのが適切でしょう。これは、看護師としてのスキルではなく、労働環境によって看護師が“辞めたい”と思うかどうかを調査していることが理由です。
いずれも関係性が高いと判断できる目安を超えていますが、特に高い数値を示しているのは、患者との関係、同僚との関係、職場で自律的に仕事ができるかどうか、仕事への評価が適切か、そして職場の規則に適応しているか、の5項目のようです。
これらの労働環境が改善されれば、統計学上、看護師の離職率は下がるといえるわけです。
職場環境改善の秘策~統計結果を受けて
職場が個々の看護師に配慮して労働環境を改善してくれれば一番良いのですが、そこまでを望むのはなかなか難しいでしょう。そこで、ここでは自分でも出来る労働環境改善の秘策を紹介します。
上で紹介した統計のうち、特に離職率との関連性が深かった項目を対象に、労働環境を改善するための秘策を伝授したいと思います。
- 患者との関係性改善!そつなくこなしてストレスを溜めない!
全項目中最高の0.8523という信頼性係数を獲得したのは“患者との関係”でした。そこで、患者さんとのコミュニケーションをいかに円滑化するかが重要な要素となるわけです。
具体的には、一般的な人間関係と同一視せず、仕事と割りきるドライさを持ってしまうのが良いでしょう。
患者さんは病気への不安や不自由な入院生活によってストレスフルな精神状態の中にあります。その状態の方に、一般の人間関係と同レベルの配慮を求めても、それは難しいもの。
医療の知識がなく、なされるがままになっているしかない患者さんの目線からすれば、ニコニコしていられるような気分でないのは仕方ありません。
例えば疲れ切ってようやく一息ついている休憩時間に「ヒマなの?」と言われても、もし相手が幼稚園児だったらどういう対応をするでしょうか?真に受けて怒ろうとは思わないでしょう。「うん、今はちょっとヒマなんだ~」と笑って応対するのが普通です。それと同じイメージで良いのです。
真面目な人ほど、相手を見下すようで気が引けるみたいですが、“医療の知識”や“病気への対応力”について言えば、大人と幼児くらいの差があるのですから、その差を意識して接するくらいで良いと思います。
- 自律的に仕事ができれば同僚との関係も円滑に!
次に信頼性係数0.7716だった“同僚との関係”と同じく0.8016だった“自律的に仕事ができるか”という項目。これらは繋がりが深いので1度にお話したいと思います。
同僚の中には仲良く出来ない、したくない相手もいることでしょう。そういう人とは関わらないのが一番良いのですが、仕事場ではそういうわけにもいきません。ですから、関係を最小限に抑えることが必要です。
そのためには、同僚に質問しなくても自律して業務をこなせるようになることが大事。
周囲に依存しないと仕事をこなせない段階にあるうちは、何かを周りに質問したり協力を仰いだりしなければなりません。そうなると、向こうも教える立場ということが手伝って、高圧的・上から目線の対応をしてくるでしょう。
しかも、教わっている手前、不愉快な対応を受けても黙って従っているしかありません。そうすると、ますます見下されてバカにされる…という悪循環に陥ってしまうのです。
仕事に不安がなくなれば、自然と人間関係の悩みも緩和するというわけですね。しかも、自律的に仕事ができれば後輩から質問を受けることも多くなります。その時に親切に対応してあげれば、自然と後輩はあなたの味方になっていくので、結果的に仲間を増やして同僚との人間関係を構築することにも繋がります。
逆に、自律的に仕事をしているのに嫉まれたりするような職場であれば、早々に見切りをつけて転職してしまうのが賢明。その場合はあなたに非はなく、職場が末期症状に陥っているだけですから、そんな職場に付き合ってやる必要はないと思います。
- 仕事への評価&職場規則はどうする?
最後に信頼性係数0.7720の“仕事への評価が適切か”という項目と、0.7721の“職場の規則に適応しているか”という項目についてご説明します。これらも関連性が深いので同時に扱って構わないでしょう。
これについては今までの項目とは少し違ってきます。
適切な評価ができるかどうかは上司の問題ですし、規則が合うかどうかは職場の問題でしょう。こればかりは、自分が努力して解決する問題ではありません。よほど理不尽な職場でなければ、患者・同僚への対応がしっかりできていれば自然と評価は上がるもの。規則についても、覚えてしまえば無理なく従えるものであるはずです。
しかしながら、現実には理不尽な職場が結構な割合で存在しています。そういう場合には、真っ当な職場への転職を考えるより他にありません。
自分がいくら努力しても解決しない場合や、あまりにも面倒な規則に縛られている職場だと感じた場合には、転職サイトへの登録をお勧めします。コンサルタントに現状の不満を伝え、違った雰囲気の職場を紹介してもらいましょう。
託児所・短時間勤務など労働環境改善の事例
こちらでは、病院側が労働環境改善のために行った対策について見ていきたいと思います。一部の病院では離職率を下げるために積極的に労働環境の整備を行っているのです。
- 事例1~短時間勤務の正社員を導入
子どもが小さかったりすると、なかなかフルタイムで働き残業・夜勤までこなすのは難しくなります。
しかし、パートタイムなどの非正規雇用では将来が不安。そんな板挟みを払拭するために短時間勤務の正社員制度を取り入れた病院があるのです。
正社員の働き方を5段階に分け、フルタイム+夜勤・休日出勤ありのA区分、フルタイムだが夜勤・休日出勤を減らすB区分、フルタイムで日勤だけのC区分、週30時間~の短時間勤務+夜勤ありのD区分、そして短時間勤務で日勤だけのE区分としたのです。
もちろん、すべて正社員扱い。ただし、基本給と賞与に差を設けています。
これなら、業務の負担が重いと感じている方も、若干の減給を受け入れるだけで正社員として働き続けられますね。実際、この病院の退職者は前年度の2割まで減少したそうです。
- 事例2~希望者を夜勤専従スタッフに
希望する看護師を夜勤専従にするという取り組みです。
実際には夜勤が辛いというよりは、生活リズムがメチャクチャになるせいで身体が辛いという方が多いことに着目した制度といえますね。
希望すれば2ヶ月の間は夜勤のみ。生活リズムを維持できる上、2ヶ月という期間が決まっているので、ずっと昼夜逆転のままではないという安心感もあるでしょう。
さらに、夜勤専従のスタッフがいることで一般シフトの看護師は夜勤の頻度が減少します。これにより、スタッフの体力的負担を減らし、労働意欲を維持することにつながるわけです。
- 事例3~未就学児を持つ看護師への保育料支援
小学校に入学する前の子どもがいる看護師に、保育料を支援するという取り組みが存在しています。
日勤スタッフには、公立保育園保育料の1/2にあたる月額2万円、そして月2回以上の夜勤をこなしたスタッフには保育料全額あるいはベビーシッターを頼むための費用補助を行っているとのこと。
さらに、小学生の子どもがいる看護師には希望に応じて夜勤を免除したり、小学校低学年の子どもがいる場合には時間短縮を認めるなどの職場環境改善策をとっています。
こういった取り組みにより、産前産後休暇・育児休暇を取っていた看護師の大半が無事に復帰し、離職率が大きく低下したとのことです。